2011-08-08

天下一品で聞く女の人生


土曜日に最近知り合った、僕よりちょっと年上の女性と、天下一品のラーメンを食べに行った。天下一品は京都発祥のラーメンで、僕もわりと好きなのだが、京都は他にもうまいラーメン屋が山ほどあるので、なかなかそこまで手が回らない。何しろ毎週一回、新福菜館三条店へ行かなければいけないのだから、そうそうラーメばかり食ってるわけにも行かないということだ。

しかしその女性は、
「フレンチより、イタリアンより、天下一品のこってりが好き」
ということだったから、それは行ってみなければいけないだろうと。何でも若い時、天下一品総本店の近くに住んでいながら、貧乏だったから食べに行くことができず、その欠乏感が今でも残っているのだろうとのこと。自分で天下一品を真似て、ラーメンを作ったりしたこともあったのだそうだ。


そういう人と一緒に食べる天下一品のラーメン、思いが伝わってくるものだから、やはり普段よりおいしく感じる。考えてみたらこの天下一品こってりとは、すごいラーメンで、普通ならラーメンのスープは、豚骨とか、鶏がらとか、肉を取り除いた骨の部分で取るものなわけだが、この天下一品のこってりは違う。肉の付いた鶏をそのままグツグツ煮込み、肉の部分が溶けてしまうことで、あのようなどろんとしたスープになるのだそうだ。これは考え方として、画期的なんだよな、やはり。まあ京都っていうのは、食べ物に関しては、ほんとに貪欲な場所なんだなと思わされる。

女性は8年前に離婚したという人で、離婚の理由を失礼もわきまえず、根掘り葉掘り聞いたのだが、これがなかなか奥深いものがあった。


4歳年上の男性と二十歳の時に結婚したのだそうだが、その元ご主人に対しては、結婚してからもずっと、ドキドキとときめくような、恋する気分が続いていたのだそうだ。こんなことまで聞くなよという話だが、夜の方も毎晩あり、そういう意味ではほんとに幸せだったとのこと。元ご主人の男の部分と、その女性の女の部分とが、ピタリと合うような、そんな感覚だったのだそうだ。

ところが娘さんの結婚について、元ご主人が自分の意見を押し通そうとしたことをきっかけに、夫婦は一気に破局へ向かうことになる。女性の方も、それまで元ご主人に対して感じていた、金遣いの荒さとか、酒癖の悪さとか、そんなものに対する不満が一気に吹き出してきて、それで別れるということになったのだそうだ。

それ以来元ご主人とは、一度も会っていないとのことだが、人間同士の間柄というものは、一筋縄ではいかないものだということを、つくづく感じさせられた土曜の午後だった。