2011-06-27

鞍馬温泉

京都に住み始めて1年4ヶ月になるのだが、いい場所もいろいろあるだろうに、それを知らないというのはもったいない。
名の知れた観光地はめぼしい所はひと通りまわったのだけれど、やはりそういうものより酒を一杯やったりするのに気分が良いところを探したいところだ。

昨日は思い立って、叡山電車にゴトゴトと揺られて鞍馬へ行ってきた。
以前知人が鞍馬になかなか居心地の良い日帰り温泉があると言っていたのを思い出したのだ。

出町柳から30分。
鞍馬の駅は、奥深い緑の中にある。

隣の貴船は、京都市内でも祇園や先斗町とならぶ名高い高級料亭エリアとなっていて、料理屋やら料理旅館やらが軒を並べ、川床料理に舌鼓を打つなんてことができるようなのだけれど、こちら鞍馬は、その分ということなのか、まったくひなびている。
だいたいが鞍馬というのは、由岐神社だの鞍馬寺だの、貴船神社だのをまわって歩くハイキングコースの、起点となっている場所で、鞍馬自体には見るべきものはあまりないようだ。
昔ながらの、ちょっと朽ちかけたような趣きのみやげ物屋兼食堂が、全部合わせても10軒程度あるばかりで、ほかに何もない。
でもそういう穴場的な場所というのも、また得難い魅力があるわけだよな。

鞍馬唯一の観光地である鞍馬寺仁王門。
鞍馬寺は山の奥にむかって広がっていて、ここからケーブルカーでそこを手軽にまわることもできるようだ。
牛若丸伝承説話の地で、天狗伝説でも有名だというから、一度は見てみなければいけないと思うが、僕は酒をのむのが目的だから、今回はパス。

ここから山へ向かってすこし歩いていく。
この道は若狭湾と京都を結ぶ、いわゆる鯖街道のひとつということになるみたいなのだが、古い建物が立ち並び、昔ながらのたたずまい。
京都というよりは、奈良あたりの田舎の雰囲気に近いような感じがした。

そこをやや歩いた所にあるこの「くらま温泉」が今回の目的地。
硫黄泉の天然温泉が湧き出していて、全体は健康ランド風になっており、食事や宿泊もできるようになっているが、日帰りでの入浴も可能。

風呂は鉄筋コンクリートの建物の中にあるものと、こちら露天風呂とがある。
施設全体を一日使い放題にすると2,500円だが、この露天風呂に一回入るだけなら、入浴料は1,000円。
僕はもちろん後者を選んだ。

この露天風呂が実に良かった。
奥深い山の中にあるので目の前に深い緑の山肌を一望しながら湯に浸かることができる。
ちょっとした秘湯の趣き。
また震災の影響なのか、元々がこうなのか、人が少なくて、僕以外にいっしょに風呂に入っているのが常時5人くらい。
ここで風呂に入ったり出たり、足だけ浸かったりして、鳥のさえずりを聞きながらぼうっとする。
なんとも言えぬ贅沢なひとときを過ごした。

本館には食堂もあるが、あまりうまそうにも見えなかったので、敷地内に設けられている休憩コーナーでとりあえず缶ビール。

それから駅前の食堂で冷や酒にニシンそば。
ニシンそばというのは、京都の庶民の味だよな、ほんとうに。