2011-02-22

東京行き


いま書こうとしている本の、取材で東京へ行くことになり、経費節減のため夜行バスを使うことにした。

夜行バスもピンからキリまであり、新幹線の値段の半額というのがだいたい標準で、京都東京間だと、7千円くらい出せば、シートが3列の、飛行機でいうとビジネスクラス並の快適さになるわけなのだが、今回は4千円という最安値に、はじめて挑戦してみた。

シートはふつうの観光バスと同じ4列で、ただ足元だけは、席数をへらし、シート前後の間隔を広くとることで、ゆったりとしているというタイプ。となりの人と、ほとんどくっつくように座らないといけないので、肘かけの取り合いとか、脚が出っぱってきたりとか、なにかと神経をつかうことにならないかというのが、いちばん心配だったわけだが、今回その点については、あまり心配しなくていいということがわかった。

夜行バスはだいたい、お金のない若い人が乗ることが多いわけで、若い人というのはマナーがいいのだ。マナーが悪いのは、むしろ僕のようなおっさんで、たぶん世の中に出て、無理が通れば道理が引っ込む、なんでもやったもん勝ち、の精神を、身につけてしまうからそうなるのだろう。シートをいちばん下まで倒さないという、まことに見上げたマナーを身につけている者も多く、またいびきをかくやからも、今回はひとりもいなかった。

シートにはフットレストとレッグレストが付いていて、これを使い、シートをいちばん下まで倒すと、感覚的には、からだがほとんどまっすぐ、横になるような感じになる。さらに今回、「さくら観光」という会社だったが、ひざ掛けに加えて、薄いクッションが2枚付いていて、これを首の下にしくと、頭もしっかりと固定される。飛行機のエコノミークラスよりよっぽど快適で、そこそこきちんと眠ることができ、脚もむくまなかった。



朝の6時に新宿に着いたのだが、前の晩、トイレと脚のむくみを用心して、酒をすこししか飲まなかったから、ちょっと一杯引っかけて、そのあとサウナで仮眠することにした。さすが歌舞伎町には、24時間営業している居酒屋がいくつもある。養老乃瀧に入ったが、けっこう混んでいて、さらにあとから、ひっきりなしに人が入ってくる。キャバクラのアフター組と学生、フリーター、というのが、おもな客層みたいだった。

煮込みをつまみにお銚子を一本あけ、いったん店を出たのだが、ライターを忘れたことに気付いて取りにもどると、泥酔した様子の若い女性が、千鳥足で店に入っていく。声をかけたらいっしょに飲もうということになり、それからしばらく、一回店もかえながら、延々とつづく彼女の話をきいた。

旅行のことやら音楽や本のこと、友達のこと、家族のこと、不倫していた元彼のことなど、他愛もない内容なのだが、ウーロンハイをあおりながら話す彼女の話は、いつまでたっても終りをしらず、そのあとに期待しないでもなかったわけだが、午後からの取材のしたくをしないといけなかったので時間切れ。泥酔する彼女を居酒屋にひとり残して、後ろ髪を引かれながら、僕はサウナへとむかった。34歳の、松坂慶子にも似たけっこうな美人で、昨日は仕事が休みだったそうなのだが、そうやって休日に、行きずりの男と、朝から酒を飲む若い女性が、東京にはいるということなのだよな。



午後からの取材は、まだ多少酒が残っていたが、なんとか無事に終了。



夜は高校時代の友達と、プチ同窓会。

中学の友達とは、10年ほど前に20数年ぶりの同窓会があり、それ以来ときたま会うのだが、高校の友達は、卒業以来まったく連絡し合っておらず、どうしているかと思っていたところ、先ごろFacebookを始めたら、30年ぶりに連絡がついた。

急な話だったのに、二人が都合をつけてくれて、新丸ビルの和食処で、また延々と酒を飲んだが、高校時代の友達というのは、多少シワが増えたり、髪に白いものが混じったりはしているが、基本的にまったく変わらない。中学の友達は、人によっては見違えるほど変わっていたりするのだが、高校にもなると、人格はほぼ完成するということなのだろうな。30年ぶりに会っているのに、なんの違和感もなく、高校時代とおなじ調子で話をした。

会社を辞めたといったら、おまえが勤めなど、続けていられたとしたら、そのほうが不思議だといわれるし、いま書こうとしている本の話をしても、おまえは高校のころから、おなじことをいっていたといわれる。こちらとしては人生のなかでいろいろ学び、経験もし、発見や決断をして、それなりに成長しているつもりでいるわけだが、そういわれるとちょっと拍子抜けするような、またほっと安心するような気持ちになる。昨日は来られなかった友達も何人かいたので、近々の再会を約束して、昨日は別れた。

そのあとは、八重洲の街で、客引きの助言にしたがって熟女キャバクラ。牛丼食べて、サウナで風呂あがりのビールを一杯飲んで、長い一日が終った。