2011-02-02

ぶり照り焼き

魚や肉なら、塩をふって焼く、野菜なら塩をふった水でゆでる、それに醤油をかけて食べるというのが、ミニマル料理の基本であると僕は思う。

そんなものは料理の本のメニューには、ほとんど載っておらず、料理としての扱いをされていないから、一人暮らしを始めたばかりで、やっと自炊をやりだしたという人などは、そんなやり方しかできない自分が悲しく、みじめな気持ちがしたりするかもしれないが、そんなことはない。
僕は今では、それ以外の料理の仕方もずいぶん身につけてはいるけれど、塩焼き、塩ゆではとても好きで、よく食べる。
じっさいにうまくて、サバやらサワラやら、鶏もも肉やら豚ロースやら、青菜やら白菜やら、こうやって食べるのがいちばんうまいと、思えるものも多いし、またこういうシンプルなやり方で料理したものというのは、しょっちゅう食べていても、あまり飽きることがない。

考えてみれば人間が、初めて料理をしはじめた時というのは、こういうやり方をしていたのじゃないか。
ただ塩で調理して、何かのソースをかけて食べるというのは、おそらくは、料理というものの原型であったはずで、すべからく起源を知るということは、そのものごとを理解するうえで、重要なことであるという意味でも、この塩焼き、塩ゆでをバカにしてはいけないのだ。
塩焼きしたものに、大根おろしとすだちやレモンでもそえるとか、塩ゆでしたものに、おかかやじゃこ、ゴマなどをかけるとかしてみると、ますますおいしくなり、ちょっとしたごちそうになるということは請け合いだ。

それから一人暮らしの場合、材料をあれこれいろいろ組み合わせないということも、大事なことだと僕は思う。
スーパーでも商店でも、売ってるものは、けっこうな量がある。
それを組み合わせて使うようにしてしまうと、一日で食べきれないくらいの量のものを買わないといけないことになり、そうすると、何日か、同じものを食べ続けないといけないことになってしまうのだ。

野菜炒めとか、料理をやろうと思って、まず作ってみようと思う料理の筆頭だと思うのだが、いやもちろん、やってみようと思ったら、どんなことでも、まずはやってみるのが、正しいわけで、それにケチをつけるつもりじゃないのだが、野菜炒めを作ろうとして、キャベツにニンジンに、もやしにニラに、と買い込んでしまうと、すべてを余らせてしまうことになる。
だったらニラ炒めとか、もやし炒めとか、一つだけを使うことにして、買ったものはその日に使いきってしまうようにしたほうが、次の日はまた、ちがうものが食べられる。
一人暮らしで料理をするという場合、買い物の時点で、かなりの工夫の余地があり、それがまた楽しさにつながるわけなのだ。

と言いつつ、今日はブリ。
ブリもそろそろ旬が終わるから、今のうちに食べておかないといけないのだ。

ブリは、アラを買って、これを大根と煮るのが、いちばんうまい食べ方だと僕は思うが、今日は切り身。
塩焼きにして大根おろしと醤油で食べても悪くないが、ブリの独特のクセというのは、こってりと甘辛い醤油味に、また合うわけなのだよな。
というわけで照り焼き。

一人暮らしの人の場合、コンロがIHであるということは、今はかなり多いのじゃないかと思うのだが、そうすると魚を焼く場合も、フライパンでやらないといけない。
魚をフライパンで焼く場合、とにもかくにも、火を強くするというのが大事なのだ。
ワンルームマンションのIHだったら、火力が小さいので、火加減は最強。
それで油をしいたフライパンを、よくよく熱して、手をかざしてみてじゅうぶん熱いなとなってから、魚を入れる。
照り焼きは、あとで味を付けるから、塩はふらない。


でこれを、フタをしめ、そのまま強火で焼く。
魚は水分が多いから、これをきちんと飛ばさないとおいしくならない。
肉だったらもう黒焦げだと思うくらいに焼いても、魚の場合、それでようやくちょうどよいくらいなのだ。
まあしかし、このあたりの焼き加減は、何度か失敗してみて、見つけるしかないわけだ。

焼いているあいだに、タレを作っておく。
濃口醤油に、酒、みりん。
酒とみりんは、これから買うなら、ミツカンから出ている安いやつじゃなく、酒なら塩分の入っていない、タカラから出ている料理用清酒か、安い日本酒、みりんも本みりんを買ったほうが、値段は倍くらいするが、たいして高いものじゃなし、やはりうまいのだ。
これを、まず醤油を、魚の分量をみて、それにふりかけるならこのくらいかな、という分量を器に入れたら、同じくらいの分量の酒とみりんをそこに入れ、味を見て、甘さが足りないようなら、砂糖を入れる。

ブリをひっくり返して、裏面も同じように焼き、表裏ともに、焦げ目がつき、火が通ったころになったら、このタレを投入。
焦げやすいから、火加減に気をつけながらタレを煮詰めて、その照りの出てきたタレを、表裏によくなすりつけたら出来上がり。

じつは僕は、ぶりの照り焼き、うまくできるようになるまで、何度失敗したかわからないのだ。
焼き物というのは意外にむずかしくて、鶏ももを焼くのも、ずいぶん失敗した。
この照り焼きの場合、調味料の加減がむずかしく、レシピを見てその通りにやると、塩っぱすぎたりしたわけなのだが、この調味料の加減については、直感を信じるというのが、うまくいくコツであると思う。
醤油の量が問題なわけだが、これは材料をよく見て、それに醤油をかけるようなつもりで、器に醤油を入れる。
僕の場合、ほんとに醤油の瓶を、ぐるぐると動かしながら、器に醤油を入れたりする。
まあそれでも、失敗することはあると思うが、失敗しないと覚えられないことというのは、確実にあるわけで、失敗すると、たしかに悲しい気持ちにはなるが、それをおそれていると進歩はないのだ。

あとはほうれん草のおしたし。
これは今日、いつもは2、3本ずつ、小分けにしてゆでるのを、一束ぜんぶ鍋に入れゆでてみたら、やはり小分けにするよりおいしくなかった。
小分けにしてゆでるというのは、何かの料理の本を見てやるようになったのだが、その手間をかけるのが、なんだか悔しくて、ときどきその手間を省いてみるのだが、いつもかならずまずい。
ほうれん草だけは、やはり小分けにして、少しずつゆでたほうが、おいしいのだ。
これはおかかと醤油をかける。

湯豆腐。

タレは醤油にレモン汁、青ねぎとおかか。

酒は賀茂鶴、特別純米酒。
昨日はつまみがなくならなかったので、2合飲んだが、やはりそれだと飲み過ぎな感じがした。
さすがだな、いい酒。