2010-10-19

ビィヤント

インド人の作るインドカレーは別として、日本人が作るカレーで、スパイスまで自分で調合してという店は、少ないんじゃないだろうか。スパイスというものは文化として、日本にはないものだから、どうしても敷居が高くなってしまうということなのだろうな。京都大学病院の近くにあるこの「ビィヤント」は、そういう数少ない店の一つ。聞いたらもう35年になるのだそうだが、いかにも昔ながらのカレー屋という趣きの店構えなのだが、店内の棚には数十種類のスパイスが、瓶に入れられて並んでいる。

カウンターのみ7、8席の、ほんとに小さな店内。クチコミを見るとおばちゃんがやっているということだったのだが、代替わりしたのだろう、30代と思しき男性と、その奥さんらしき人の二人が、僕を出迎えてくれた。

メニューは筆頭が、カツカレー。950円。その他にはビーフ、チキン、シーフード、ベジタブル。それぞれ700円。ビーフカレーだけは、辛さを甘口、中辛、大辛の3段階から選ぶようになっている。カツカレーには、その4種類の好きなソースを選べるようになっている。カツカレーにすると、カレー自体の味が解らなくなってしまうかなと思い、ちょっと迷ったのだが、腹も減っていたし、メニュー筆頭でもあることなので、やはりカツカレーを注文。

カツカレー、ビーフ、中辛。辛さは、甘口がふつうの辛さなのだそうだ。

このカレー、まず何といっても、カレーを半分の側にだけでなく、全体にかけてくれるのがいい。カレーを半分の側にかけるというのは、見た目のきれいさということだと思うが、そうなっていると僕は、どうもカレーとごはんの分量を調整し、カレーとごはんのどちらかが、途中で足りなくなってしまわないようにすることに気を遣ってしまって、心置きなくカレーを味わうことができなくなってしまうのだよな。かといって自分でカレーを全体にかけてしまうと、汚いとか言われそうだし。こういう実質重視の精神、僕は好きなのだ。

カツはわりと平べったい肉を、カリッと揚げてくる。こういう固めの仕上げの方が、カレーをかける分には合うのだよな。ライスは黄色い色が付いている。何かスパイスを入れてるのだな。インド風だ。

そしてカレー。なるほどこれは、昔ながらの味。昔ながらのインドカレーだ。昔ながらだということが、なぜ解るのか、自分でも不思議なのだが、食べた瞬間に、懐かしいような気持ちになる、そういう味。昔デバートの上にある食堂で食べた、黄色いカレーとかの味があると思うのだが、基本はその路線なのだが、それをもう少し輪郭をくっきりさせ、全体を華やかにしたような感じ。最近のカレーによくある、過剰なコクや、甘み、酸味などはほとんど感じず、たぶん昔ながらのやり方で、まっすぐ作っているのだろうと思う。

こういう昔ながらのカレーが、今でもお客さんに支持され続いているというのは、貴重なことだと思う。やはり時々は、こういう原点に還らないと、物事わからなくなってしまいがちだよな。


ビィヤント カレー / 神宮丸太町駅
昼総合点★★★★ 4.0