2010-09-02

「見てわかるDNAのしくみ」(工藤光子/中村桂子)

この本は、見た目ふつうのブルーバックスなのだが、

なんと中に3枚の、小さなDVDが収められている。
これを再生すると、かなりすごい。

全編オールCGで、DNAがあれこれがんばる様子が、目で見えるのだ。

DNAの転写。

2001年宇宙の旅かと思うような、幻想的な光景。

細胞の中を、いろんなもんが、うようよしているわけだ。

DNAの複製。

DNAの修復。
などなど。
DNAの仕事のひと通りが、3枚で計1時間ほどの映像で、網羅されている。

もちろん、きちんとわかりやすい解説も入っていて、これは絶対、小学生とかが見ても、それなりに興味もって、わかることがあったりすると思う。

生命誌研究館ではこれを、10年以上の歳月にわたって取り組み、つくり上げたのだそうだ。
たしかにCGの映像が、あとにいくほど、きれいで細かくなっている。
10年のあいだに、コンピュータが進歩したということだよな。

生命誌研究館では、一方で最前線の分子生物学について、研究をすすめているが、もう一方、それを一般の人にたいして、わかりやすく表現するということに、多大な努力を費やしている。
生命誌研究館での展示物や、公開セミナーなど様々なイベントは、その表れなわけなのだが、この本はそういう意味じゃ、「お茶の間で楽しむ生命誌研究館」といえるな。

自分のからだに60兆個ある細胞の中に入っている、目にも見えないほど小さなDNAというものが、こんなにうまいことできていて、こんなことまでやっているのかと、ひたすら驚くとともに、それを人間はまた、こんなところまで解明しているのかと、ほんとに感心する。
また生命誌研究館では、このCGをつくる過程で、実際にDNAを動かしてみるうちに、教科書に書いてある説ではうまくいかず、一般には言われていない、べつの説で考えないといけないのではないか、みたいなことも、明らかになったのだそうだ。
そういう研究と表現のスリリングな関係、というものが、このDVDから垣間見られるところもおもしろい。