直径500メートルほどの小惑星「イトカワ」へ、岩石を採取するために打ち上げられたはやぶさ。
ソーラーパネルをふくめても、3メートル四方ほどの小さな探査機が、無限の宇宙をひとり飛び続け、世界初の挑戦をくりかえすという、けなげとも思える姿がまず、胸をうつのだが、さらにすごいのは、はやぶさが無事地球にたどり着くまでの、壮絶ともいえる研究者たちの悪戦苦闘の様子だ。
はやぶさはイトカワ着陸にあたって、3つあり、最低でも2つがないとうまく動かないはずの、姿勢制御のための装置、「リアクションホイール」が、2つまで故障し、残りの一つに、本来はべつの目的で使う「化学エンジン」を併用し、なんとか姿勢を制御する。
ところがその化学エンジンの燃料が漏れ出し、空になってしまい、さらに電池の充電も切れてしまったため、方向を制御できず、通信も不能になったはやぶさは、46日間にわたって行方不明になる。
やっと見つかったものの、姿勢制御ができないはやぶさを、主エンジンである「イオンエンジン」の燃料である「キセノンガス」を、直接機外へ噴射させて姿勢を制御するという、まったくの想定外の奇策でなんとか姿勢を立て直すが、4つあったイオンエンジンの、3つが壊れて、残った1つのイオンエンジンの、今度は「中和器」という装置が故障。
今度こそ絶望的かと思われたが、それも別のエンジンの、壊れていなかった中和器を使うという奇策でふたたび乗り切り、はやぶさは無事、地球に帰還するにいたる。
この本では、その研究者たちの、立ちはだかる壁をひとつひとつクリアしていく、ほとんど鬼気迫るともいえる様子を、本人たちのインタビューも交えながら、克明に描いていく。
7年間にわたり密着取材した著者だからこそ、書き得たことなのだろう。
はやぶさに思いをよせる研究者たちのセンチメンタリズムに、著者が肩入れしすぎ、後半ちょっと、ベタベタした湿っぽい感じになるのが、僕としては鼻に付くところもないではなかったが、日本が誇る、宇宙開発の大きな一歩である、はやぶさプロジェクトについて、全貌を知るには、おすすめの一冊だと思う。
★★★★☆ 4.0
小惑星探査機 はやぶさの大冒険