寿司屋もピンからキリまで色々あるわけだが、ここは僕が、最高であると勝手に決めつけている店。何よりいいのは、本格的であるにもかかわらず、安いということ。だいたい東京で、わざわざ高い金を払って極上の魚を食べようとすることに、あまり意味があるとは思えない。ほんとにイキのいい魚を食べたければ、鳥取へでも行けば、信じられないようなのが、考えられない値段で食べられるのだから、そこで刺身を食べればいい。金を払えば何でも手に入ると考えることは、文化的な貧困であって、その土地で無理なく手に入るものを、いかにおいしく食べるかということに、人間の豊かさが表れるものと思う。
僕の考えでは寿司屋というものは、ただイキのいい生魚を食べるだけの場所ではなく、まず大将が魚に少し手を加える、そのおもしろさを味わう場所であり、さらにカウンターという対面の空間で、調理師でありバーテンでもある大将との、料理を通したやりとりを楽しむ場所である。とやけに語っちゃってるが。だから出すものは大将に完全におまかせで、こちらは何が出てくるのかとわくわくしながら待つというのが、寿司の食べ方としてはいちばん楽しいのであって、しかもそういう食べ方をしながら、最後のお勘定で「こんなに安いの」となるというのが、どう考えても最高の寿司屋なのだ。
というわけで、昨日大将が出してくれた、料理の数々。
ほたての煮たのとあん肝。
鯛のお造りと白子の焼いたの。
ゆでだこ。このゆでだこが、この店の自慢料理の一つなのだが、ふつうゆでだこは、さっとゆでるところ、この店ではかなり長くゆでるのだ。そうするとこれがたこかと思うくらい、やわらかくなる。ところがこれがまた、ゆですぎるとぐだぐだになってしまうから、たこをゆでるときはずっと睨めっこをして、ぐだぐだになる数秒前というところで火を止めるのだそうだ。
新子。コハダの子供。流通する期間がみじかいので、ふつうこれを寿司屋で頼むと、とんでもない値段を取られる。
とろけるかと思うようなイカと、よく脂がのってカツオかと思ったアジ。
赤身のヅケと中トロ。
ほくほくの穴子と醤油漬けのイクラ。
塩だけで食べるたっぷりのウニにシメ鯖。
大将は料理全般に興味がある人で、最後にエビチリをもってきた。きちんと本格中華の味。
これで一人お酒を3本ほど飲んで、一人頭7,800円。どうですか、お客さん。
かまた寿司
不定休なので、行く場合はかならず電話で確認を。
03-3731-1238
