2010-03-02

己斐本町 「豚鳥」

引越しの準備を着々と進めているつもりなのだが、今日はめぼしい食器や調理器具をダンポールに詰めてしまって、もう引越し前には料理をしないことにしたのだ。いやいつも料理らしいことはしていないが。それで、僕はこれまで、広島の飲み屋はほとんど未開拓だったので、せっかくだからこの機会に、家の近くの、まだ行ったことがない飲み屋へ行ってみることにしたのだ。

家のすぐ近くに「己斐ショッピングセンター」という所があって、昔はショッピングセンターだったのだろうが、今は壊滅してしまって、「食堂街」という名前の所に、飲み屋が4、5件、営業しているだけなのだが、そのいちばん手前の「なお」という店には、僕は時々、お姉ちゃんと和みに行くのだが、そのいちばん奥の、「豚鳥」(とんとり)という店が、とてもうまいと、先日人から教えてもらって、そこへ行ってみたのだ。

もう、ちょっと酔っ払ってしまったので、文章を書くのにこらえ性がなく、結論を先に言ってしまうと、この店、大変うまかった。

店主はまだ若くて、たぶん30代だろうな、たまたまカウンター席の、店主の目の前に座ったので、またこの店主が陽性で、おちゃらけているとか、へらへら明るいとかいうのとは、まったく違うのだが、色々なことに自分なりに挑戦して、そういうことを何のてらいもなく話してくれるのが楽しくて、色々話をしながら酒を飲んだのだが、たぶん焼き鳥屋を開業しようと考えてのことだったのだろうが、まず九州一周だの、四国一周だの、大阪や、東京や、そういう場所の、日本一と言われる焼き鳥屋を、片っ端から食べ歩いて、自分なりに、どうしたらうまい焼き鳥屋ができるのかを、徹底的に研究したのだそうだ。その姿勢がいいよな。

普通飲食店をやろうと思ったら、まずはどこかの店で修行するとか、そういうことを考えるものだと思うが、この店主はそういうことはまったく考えず、店での修行の経験はまったくなく、そうではなく、自分で食べ歩くことが、修行だったのだそうだ。僕はこれは、かなり正しいのじゃないかと、素人考えとして思うのだが、実際そういう中で得た、ヒントやらアイディアやら、そういうものを、この店で、一つ一つ実現させている、といったところなのだと思う。

まずは突き出しにでてきたのが、塩煮込み。ホルモンと大根の煮込みなのだが、味が塩味。煮込みというと、どこの焼き鳥屋でもありそうなものだが、それが塩味だというのは、新しい感じがするのだよな。実際味もうまい。

取り皿には「ぶたみそ」というものが付けられていて、これは煮込んだ豚肉と、赤味噌と砂糖と唐辛子と、ニンニクとゴマと、みたいなものが合わせられているもので、塩味の焼き鳥につけてもいいし、あと大量の生のキャベツが出てくるので、それにつけて食べても、またそのまま舐めても、酒によく合う。

焼き鳥は6本食べて、どれもうまかったのだが、今日のおすすめという2本があって、それは悪いが、死ぬほどうまかった。

その一つは、「肝」というもの。鶏の心臓とレバーを一緒にしたもので、薄味の、しゃばっとしたタレと、青ネギがかかっている。なにより肉が、新鮮で良いのだな。島根の肉屋と契約しているそうで、その朝シメた肉が、夕方には届くようになっているとのことだが、歯ごたえのある心臓と、とろけるかと思うようなレバーの取り合わせ、これにはほんとに死んだ。心臓とレバーと、別々に出すというのは普通だが、それを一本の串に刺して、一緒に出してくるというのは、新しいよな。薄味のタレというのも、やはり新しい感じがしてうまい。

それからもう一つは、豚のタン。これもぷりぷりした歯ごたえで、かなり死ねる。味は塩とコショウ。

ササミわさびもうまかった。たっぷりと盛られた生わさびが、かなりツンときて、一口食べるごとに咳まで出るほどだが、新鮮な風味があっていいのと、ぷりぷりとした、とろけるかと思うような、レアのササミ。たまらない。他にも豚のカシラ、親鶏、豚耳というのを食べたが、どれも大変うまかった。

酒は、初め生ビールを飲んで、そのあと、「大将の今日のおすすめ」という冷酒を頼んだら、出てきたのは「黒龍」という、福井の酒だそうで、これがまた甘めで、申し訳ないが、僕好み。

店内も洒落た感じの内装で、お客は若いカップルが多かった。市の中心からわざわざ電車で来る人も多く、五日市やら呉やらからも、来る人がいるのだそうだ。

勘定は、シメて2,320円。僕はもう、引っ越す前には来られないと思うが、店主との会話もふくめて、最高に満足して帰ってきた。

豚鳥 (焼鳥 / 東高須、広電西広島(己斐)、西広島)
★★★★★ 5.0