2010-03-02

祇園 お好み焼き「きさや」

広島にはお好み焼きの焼き方、何通りかあるわけだが、有名どころで言うと、「みっちゃん」と「八昌」があるが、それともう一つ、「三八」(さんぱち)というのがあって、この三八の焼き方は、みっちゃんや八昌とは、コペルニクス的転換というくらい、違うのだ。

まず第一に違うのは、麺の扱い方で、みっちゃん・八昌チームは、麺と、キャベツや肉などの本体を、別々に調理して、最後に合体させるというやり方をするが、三八では、初めから、麺をキャベツや肉などといっしょに積み上げ、そのまま蒸らす。その麺というのが、またただ者ではないわけで、これは開店前の下準備で、イカ天かすといっしょに炒め、だしで味をつけたものを、袋や器に入れておいて、実際に作る段になるとそれを取り分け、さらにソースで味をつけて使う。

そして第二に、三八では、頃合いを見計らって、蒸しあがった本体を、大きな鉄のアイロンで、上から体重をかけてギュウギュウ押し付けるのだ。キャベツの汁が鉄板にジャーと音を立てて流れ出し、ぺったんこになったものを、もう一回こんもりと形を作りなおすのだが、こうやると、キャベツの水気が出てしまって、パサパサに固くなりそうな感じがするが、全くそんなことはない。まず第一に三八では、マジ、というくらい大量のキャベツを使うので、こうやって押しでもしないと、水気が多すぎるという結果になる。次に、押されて、キャベツと麺が混じり合うことによって、全体としてやわらかな、ふんわりした、ぷにぷにした感じの口当たりになる。

さらにこれが、最強だと思うのだが、キャベツから汁が出るときに、その汁が麺のソースで味がつき、それによって、キャベツにほんのりと、ソースの味がつくことになるのだ。

お好み焼きというと、普通、いちばん上側にだけソースが塗られて、麺とキャベツには味が付いていないものだが、やはり全体にきちんと味が付いていた方が、当然おいしいと僕は思う。

この焼き方、みっちゃん・八昌チームに比べて、あまり一般的じゃないと思うのだが、麺と本体を別に調理するのは、繁華街で営業する場合、本体だけをあらかじめ蒸しておくことによって、お客に早く出せるという事情もあるみたいで、繁華街の店がほとんどこの焼き方をするものだから、お好み焼きとはこういう焼き方をするものだと思われているところもあるのじゃないか。

たぶん昔は、住宅街のお好み屋では、こういう風に焼かれていたんだろうな。それを三八が大々的に広め、三八で修行した人が各地で、今でもこの焼き方をしている。僕は興味があって、その三八系の店に、知り得るかぎりひととおり通ったのだが、本家三八も含めて、その中で、この「きさや」と、中国道千代田インターすぐ近くにある「三八松浦」が、この2店は全く同じくらい、一番おいしい。

今日もきさやの、ふんわりぷにぷにのお好み焼き、変わらずうまかった。今不景気だし、しかも近くにイオンモール祇園店ができて、土日はお客をそちらに取られて、なかなか大変なのだそうだが、ぜひ頑張って続けてほしいな。