2008-08-27

広島中区 お好み焼き かんらん車(再訪)

このところ急に涼しくなったおかげで、風邪を引いてしまった。
というか、風呂に入ったり、お酒を飲んだりすると頭がいたくて、何故なんだろうと思っていたが、あとで考えてみると、ああ、風邪を引いたんだろう、と。
かなり涼しくなった夜、冷房をかけて寝たのがいけなかったのだ。
まあ大した風邪ではなかったので、もう治ったのだけど。

昨日、お好み屋「かんらん車」の僕の記事について、
「広島に星の数ほどあるお好み焼き店で、個人的にはここがNo1だと感じます」というコメントを寄せてくれた方がいた。
僕は広島のお好み屋に全部行った訳でもないし、だからかんらん車を「広島で一番」とは言えないが、でも少なくとも僕も、僕がこれまで行った広島のお好み屋の中では、 この店がいちばん旨いと思う。
なので気持ちが通じたみたいで、ちょっと嬉しかった。
ということで、嬉しさついでに、今日もかんらん車でお好み焼きを食べてきた。


今日も「そば肉玉」。
エビやイカが入ったのを頼もうかとも思ったが、やっぱりやめた。
シンプルなそば肉玉が、味のちがいが一番よく分かるのだ。
ついでにコメントにつられて、昼飯だったが、生ビールとイカゲソのしょうゆ炒めも所望。
やっぱりいい店では、きちんと満喫しないといけない。

かんらん車のお好み焼きは、今日もおいしかった。
酸味の少ない、甘辛いしょうゆ味のようなソース。
ホクホクでジューシーなキャベツ。
パリッと焼けた、ちょっと太めの麺。
この三重奏がたまらない。
最後の一切れまで、一気に食べてしまう。

これまで一番おいしいと思っていた、八昌との違いを思う。
お好み焼きの味について考えるとき、まあもちろん、色々な要素がある訳だけど、やはり「キャベツの味をどう引き出すか」ということが、大きなポイントになるだろう。
八昌はそこで、「キャベツを蒸すのに時間をかける」という考え方を提出した。
キャベツの蒸し時間15分という、お好み焼きを焼く時間としては、とてつもなく長い時間をかけることにより、キャベツがやわらかく、甘く仕上がる。
経営上のリスクを抱えながらも、あえてこの15分間を守りとおす八昌は、王者と呼ぶにふさわしいと思う。

しかし八昌のお好み焼き、 欠点もある。
時間をかけてキャベツに火をとおし、さらに上から押すものだから、全体に水分が抜けてしまうのだろう、ちょっとモソモソした感じになる。
はじめの一口は感動があるのだが、半分を食べる頃にはちょっと飽きてしまい、残りを食べるのが正直つらくなる。
これはお好み焼きの宿命なのかと思っていた。

しかし違うのだ。
かんらん車のお好み焼きは、キャベツが甘くやわらかいだけでなく、水分をいっぱい含んでジューシーで、ホクホクなのだ。
これはそのように仕上げるように、店主が目指し、努力していることなのだと思う。

店主は焼くとき、お好み焼きを一度も押さない。
普通の店ではお好み焼きを焼くとき、コテで上から押しつぶす。
これは平たくすることにより、鉄板から遠い部分のキャベツが生焼けにならず、きちんと火が通るようにするということだろう。
その結果として、キャベツの水分は逃げてしまうことになる。
しかしここではそれはしない。
その代わり、キャベツを蒸しているとき、途中で一度、わざわざ皮をはがし、肉とキャベツをひっくり返す。
それによって、押しつぶさなくても、キャベツが生焼けにならず、しかも水分を含んだままでいられるようにしているのだろう。

同じような考え方の店としては、僕の知っている範囲ではほかに、みっちゃん光町店胡桃屋がある。
胡桃屋はかなり独自路線なのだが、みっちゃん光町店は、この店ととても近い。
そう思って店主に聞くと、店主は6年前にこの店を出すまで6年間、みっちゃん総本店で修行したそうなのだが、みっちゃん光町店の店主とは、ずっと一緒に仕事をした仲間なのだそうだ。
偶然だろうが、同じ時期、同じ場所で、同じことを指向した人たちがいたということだ。
これは、みっちゃん総本店、八昌につづく、広島風お好み焼きの新しい流れと言えるのではないかと僕は思う。

食べ終わって店主と少し話をしたのだが、たいへんな職人気質で、お好み焼きをせっかく焼いても、出来が自分の決めた許容範囲に入らないと、客に出さずに捨ててしまうこともあるという。
今日僕が食べたものは、麺の焼きがちょっと気に入らなかったが、許容範囲にはちゃんと入っていたと言っていた。
鉄板の温度や、また温度調節をするから温度が変化するという意味なのだろう、「鉄板のタイミング」という言葉をつかっていたが、それがとても重要で、鉄板と自分が一体になれた感じがしたときには、いいお好み焼きが焼けるのだそうだ。
それには自分の精神状態もとても大事で、夫婦喧嘩などをしたあとには、なかなかうまくいかない、なのできちんとした精神状態に自分をもっていくよう、日々努力しているのだとのことである。

いやいやいや、まったく頭が下がることである。
しかもこの店主、お好み焼きについて、僕にいろいろ話してくれながらも、
「でもお好み焼きを焼いているときは、そんなゴタクはまったく考えていないですけどね」と、かならず付け加えるのである。
あくまで結果重視、職人に徹する人である。

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