2008-06-09

広島の様子

広島の市街地は、太田川という川があって、それが北から南、瀬戸内海に向けて降りてくるのだが、その太田川が上流から運んできた土砂によって、長い時間かかって作られた中州の上にできている。
正三角形を思い浮かべて、そのひとつの頂点が北、反対側の底辺が南に向いているとして、それが広島の市街地。東西の斜辺に沿って川が流れ、さらにその支流が4本か5本、三角形の中を南北に流れている。
東の斜辺の中点、真ん中が、広島駅。北の頂点に、横川駅。西の斜辺の中点が西広島駅で、ぼくがいま住んでいるのはそこから歩いて10分くらいの場所だ。

三角形の中は、広島電鉄の路面電車が、それこそ縦横無尽に走っている。一両だけのものと、三両編成のものとがある。30年くらい経っているんじゃないかと思うくらい古いものと、最新式のがある。それが子ネズミのように、街を走り回る。
路面電車は道路の上を走るから、信号待ちはしなければいけない。でも専用軌道を走るから、渋滞に巻き込まれる心配はない。バスと違って定刻どおりの運行が可能なのである。

西広島の駅から広島駅まで、20箇所くらいの停留所に止まりながら、だいたい30分。車内には、運転手のほかに車掌がいる。車掌は男の場合もあれば、女の場合もある。男は優しいが、女は無愛想だ。組織の中で仕事する女は、だいたい無愛想になるものだ。攻撃から身を守らなければいけないからだ。

ぼくは移動にはもっぱら、自転車を使う。自転車を買ったのだ。銀色のママチャリ。変速機はなし。一万二千円。ハンドルの前についているカゴだけは、少し大きいのにとりかえた。



自転車でも、広島駅まで、普通に走れば30分くらい。広島市内は、すべてが30分圏内にある。

変速機なしのママチャリは、ちょっとこぐとすぐペダルが軽くなる。スピードが出ないのだ。いちばん安いやつを買ったので、仕方ない。しかもすぐお尻が痛くなる。
こぎながらいつも、変速機付きを買ったほうが良かったかと自問自答する。しかしいいのだ。目的地にいかに早く着くかということではない。まわりの風景を見、歩いている人を見、広島を感じるために自転車をこいでいるのだ。

自転車は、歩道を走るか、車道を走るか、二者択一である。車道を走る以上、自動車と競わなければいけない。それもひとつの人生だろう。
歩道を走れば、人の動きに合わせなければいけない。降りて自転車を押しながら歩く機会も多い。しかし、これでいいのだ。