薬研堀の八昌へ。
薬研堀というのは、流川という飲み屋街のはずれの、まぁ風俗街のようなところなのだが、日曜ということもあるだろうが、まだ夕方5時すぎだというのに、ずらりと行列している。
待つこと20分、店に入って注文して、それから30分。メニューにあらかじめ、そのくらい待つと書いてある。若い店員は、にこりともせず黙々と働いている。目の前でいくつものお好み焼きが、次から次へと、手際よく作られていく。
やっと出てきたのがこれ。
ちょっと楕円形。卵を半熟にして、それがソースとからまっている。
それもひとつのポイントなのだが、何よりこの店がおいしいのは、一人前を作るのに30分をかけるという、そのことそのものなのだ。
広島風のお好み焼きは、まず生地を鉄板に、クレープのように丸く伸ばし、その上にキャベツ、もやし、天かす、豚バラ肉、などなどをこんもりとのせ、塩とかつお節の粉で味付け、それを裏返し、しばらく蒸し焼きにする。生地が上になって、ふたのような役割をしている。
この店がほかと違うのは、この蒸し焼きにする時間が、たいへん長いのだ。
カレーを作るときに玉ねぎのみじん切りを炒めるが、弱火でゆっくりやるとあめ色になって、甘く、おいしくなる。キャベツも同じなのだろう。
ちょうどザワークラウトみたいな、甘く、やわらかい、ほかと同じキャベツとは思えない味がする。
それだけ時間をかけると、店の回転率は悪くなるだろう。値段もほかと変わらない、そば肉玉、780円。しかしうまいものを出せばこんな街のはずれでも、お客が途切れず来てくれるということだ。
お好み焼きは奥が深い。まだまだ先は長そうだ。