2013-05-25
矢吹申彦 『おとこ料理讀本』
世の中に、「料理が好きでたまらない男」はどのくらいいるのだろうか。
最近は、「料理男子」「お弁当男子」という言葉があるくらいだから、若い世代には、料理好きの男性も少なくないのかもしれない。
ぼくの場合は、元妻と別居して致し方なく料理をするようになり、徐々に料理の魅力に惹かれていったのだけれど、ぼくより年が上の人達は、まだ「料理は女の仕事」という考えが残っている世代だから、料理を愛する男性はごくごく少数派だと言えるのではないかと思う。
『おとこ料理讀本』の著者矢吹申彦氏は、そんな「料理おっさん」(失礼)の一人である。
1944年生まれだから、もう70歳近い。
職業はイラストレーターで、本職の料理人などではない。
20代の頃は、料理に関心はなく、家の料理はすべて奥さんがしていたそうだが、30歳になった頃、伊丹十三氏からイラストの資料として、京都料亭の折り詰めが届けられた。
その折り詰めが「見事に美しく、かつ旨かった」ため、「今一度それを食べてみたい」と件の料亭に通うようになり、カウンター越しに職人の仕事を見るうちに、料理に関心を持つようになったのだという。
それ以来、色々な料理店へ行き、そこで作り方を見、味を記憶した料理を、家で作ってみるようになった。
「旨い酒が呑みたい、旨いものが食べたい」の一心で、奥さんに押し付けるのでなく、自分が作るのだそうだ。
『おとこ料理讀本』には、そんな矢吹氏が作る料理の数々が掲載されている。
誰のためでもない、自分のために、労を厭わず作る料理だから、すべてが喜びに溢れている。
婦人雑誌『パンプキン』に12年間にわたって連載されたものをまとめたそうだけれど、冒頭は「酒の肴」から始まっている。
世に男性が書いた料理の本は数多いけれど、自分のために作る料理をまとめた本は、大変珍しいのではないだろうか。
矢吹氏はまたイラストレーターだから、自身が描いた料理のイラストが、全ページフルカラーで掲載されている。
これがまた、何とも風情がある。
詳しいレシピが掲載されているから、料理本として実用性が高いのはもちろん、エッセイもあるから、読み物としても面白い。
ぼくもこの本は折にふれては開き、「鯖の酒焼き」を初めとして実際に作ったり、作る料理の参考にしたりしている。
「料理を楽しみたい人にはオススメだよね。」
女性にとっても参考になると思うよ。
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※矢吹申彦氏がイラストを描いた料理本
池波正太郎『そうざい料理帖 巻一』
池波正太郎『そうざい料理帖 巻二』
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