2012-04-24

初音ミクとねこふんじゃった。
「パエリア」




「初音ミク」が最近流行っていて、去年は紅白に出場するのじゃないかとすら思うほど、一般の知名度を獲得したわけなんですけど、僕は初音ミクは大して詳しいわけでもありませんが、ネットの知り合いが初音ミクが好きで、曲を教えてくれたりしているので、初音ミクの曲を、わりと前から耳にしていたということはあるんです。



初音ミクが面白いと思うのは、「バーチャルアイドル」だということなんですよね。元にあるのは、ヤマハが開発・販売した「VOCALOID」という音声合成システムと、その上で動く、ソフトウエア。女の子の歌声を自由に合成できるソフトウエアで、それを開発した会社がそのソフトに「初音ミク」という名前をつけて、あの緑色の噴水頭のキャラクター画像をつくり、あたかも「1人のアイドル」であるかのような設定をしたということなんですね。



ソフト開発会社の立場からすれば、ソフトは使ってもらわなくては売れないわけだから、1人でも多くの人にソフトを使ってもらうためにはどうしたらいいのかという、販売戦略上の作戦なのだと思うんです。女の子の歌声を合成するソフトなのだから、どうせならその女の子に名前やキャラクター設定をして、イメージがわくようにしたほうがいいだろうと。それで権利関係もゆるやかにして、使用者がキャラクター画像を使って、新たな動画などをネットなどに自由に投稿できるようにした。



そうしたら、それが大当たりして、1大ムーブメントが巻き起こったというわけなんですね。初音ミクの音声を使って、自分で作詞作曲した曲や、CGで初音ミクが踊って歌う動画が、次から次へとネットに投稿されるようになっていく。さらにそれが、日本ばかりでなく海外でも人気となり、去年はアメリカで公演が行われたり、トヨタのアメリカのCMや、グーグルのCMにまで使われるようになったりしたというわけなんです。



実際の話、初音ミクのコンサート映像とか、見てると感動があります。まず1つには、「初音ミクの可愛らしさ」ということはたしかにあって、キャラクター設定が秀逸だったということなのでしょう、今年50になるおっさんから見ても、「いいな」と思えるものがある。しかしさらに感動的なのは、そこにいる観客の盛り上がりなんですね。初音ミクの定番アイテムである「ネギ」のペンライトを振りながら、野太い声で合いの手を入れる様子は、べつにそこいらのアイドルのコンサートと変わらないのだけれど、彼らが見ているステージ上の初音ミクは、「バーチャルアイドル」だということなんです。



「バーチャルアイドル」ということは、もちろんまず、「人間」としての実態がないということなんですが、しかしそれだけではないんですね。「初音ミクは、観客自身によって作られている」ということなんです。初音ミクが歌っている曲は、プロによって作られたものではなく、観客の中の誰かによって、作られたものだということです。ですから初音ミクのコンサートで、観客が盛り上がっていることは、一般のアイドルのように、「天上の偶像」を讃えているのではなく、「自分たち自身」を讃えていることになる。「俺達って、いいよな」とでもいうような、連帯感の表明なんですよね。



ところで面白いと思うことは、それを仕掛けているおおもとにいるのが、「ヤマハ」だということなんです。ヤマハだと聞いて、すぐに思い出すのが、「ポピュラーソングコンテスト」なんですね。



ポピュラーソングコンテスト(ポプコン)は、ヤマハが主催して、1968年~1986年まで行われました。素人が、自分で作詞作曲した曲を披露して、それに順位をつけるという形で、コンテストが行われるわけですけれど、そこから錚々たる人たちが、プロになり活躍したことは、よく知られているでしょう。井上陽水、上田正樹、上條恒彦、庄野真代、八神純子、松崎しげる、中島みゆき、世良公則、などなど。新人アーティストの登竜門ともなっていたわけなんですよね。



でもこれ、なんとなく、初音ミクと似ていませんか?ポプコンも、ヤマハの狙いとしては、楽器を使う人の底辺を広げることにより、楽器の販売を促進するということが、根本にあったと思うんです。そういう狙いでやったことが、大当たりして、大きなムーブメントとなっていく。そういう意味では、初音ミクが、音声合成の機器およびソフトウエアの販売を狙いとしていることと、まったく同じだといえると思うんですよね。「ヤマハ商法」と言っては語弊があるかもしれませんが、ヤマハ一流の、1つのやり方なんだという気がします。



さらに僕は、ヤマハがこのやり方を、どうやって覚えたのかということについて思うことがあるんですけど、それは「ねこふんじゃった」なのではなかったか。



「ねこふんじゃった」は、僕などでも子供の頃、幼稚園の頃にすでに弾けるようになっていたわけですけれど、誰に教わったという覚えもないんです。幼稚園においてあるピアノで、誰かがねこふんじゃったを弾いているのを見て、すぐに弾けるようになってしまったわけなんですね。ねこふんじゃったは、黒鍵をフルに活用する曲で、それを楽譜に書けば、シャープやらフラットやらがたくさん出てきて、すごく難しく見えるものになりそうだけれど、弾いているのを見ると、目立つ黒鍵を順に押していくほうが、簡単なんですね。



「ねこふんじゃった」は、作曲者も不明で、それがいつ、どのようにして日本に伝わり、日本の子供たちがあれほど熱狂して弾くようになったのか、よくわかっていないそうですけれど、この「ねこふんじゃった」がピアノの販売に寄与した役割は、とても大きかったのではなかったでしょうか。僕もそのクチだったかもしれませんけど、ねこふんじゃったが弾けるようになったから、ピアノがやりたくなり、親に「ピアノを買ってくれ」といった子供とか、少なくなかったのではないでしょうか。また親の方にしても、子供が「ねこふんじゃった」を弾けるようになるのを見て、「そんなに簡単に弾けるようになるのなら、ピアノを買ってもいいかしら」と思ったということもあったでしょう。



「ねこふんじゃったはヤハマが流行らせた」とまでは、僕はさすがに言わないですが、そうであってもおかしくないほど、「ねこふんじゃった」はピアノの販売に貢献したにちがいありません。僕はヤマハはそれを見て、「楽器は使う人が楽しまなければ売れない」ことを痛感し、それからポプコン、さらには初音ミクへの道を歩んでいったのじゃないかという気がするんですけどね。ぜひヤマハの人に、実際のところどうなのか、聞いてみたいです。



* * * * *



昨日は「パエリア」。パエリアは言わずと知れた、スペインの代表料理です。スペインは、イタリアなどとちがって、「米」を使った料理が多いんですね。味付けも、ハーブやチーズなどをゴテゴテいれたりはせず、オリーブオイルとニンニク、それにパセリ、とかいうくらいの、シンプルなものが多くて、なんとなく、日本とセンスが似ているような気がします。僕も1回スペインに行ったとき、「バル」に並んでいる小皿料理が、どれも死ぬかと思うくらいおいしくて、ヨーロッパでいくつか行った国の中では、スペインが一番おいしいと思いました。



ちなみにスペインは、女の子もかわいいです。僕は1回、スペインからローマまでの飛行機に、セビリアの団体と乗り合わせたことがあるんですが、その人達、飛行機の離陸までと、着陸してから、ギターをかき鳴らしながら歌えや踊れやの大騒ぎ。その中にいる女の子たちが、また生き生きしていてかわいくて、まだ20歳そこそこだった僕は魂を抜かれてしまい、ローマではその女の子たちと一緒に、美術館やらどこやらへ行ったこともありました。



パエリアは、見た目豪華で、「洋風ちらし寿司」とでもいった風情、お客さんが来たときのもてなし料理とかにも最高なわけですが、作るのはそれほど難しいことはありません。材料さえあれば、それほど手間もかからずに、失敗する危険もそれほど高くなく、初めての人でもできるのじゃないでしょうか。ご飯の炊き加減が、たしかに多少、難しいといえば難しいこともありますが、それでもそれほどではありません。調味料も、スペインではパエリアを作るとき、「サフラン」を使うんですが、べつにそんなものは使わなくても、十分おいしくパエリアが出来あがります。



調味料というものは、たしかにその国その国で独自のものがあり、その国の料理をよく知っている人に言わせれば、「その調味料がなければ、その国の味ではない」ということになるんですが、べつにそんなことを気にしていては、いくつ調味料があっても足りません。手近にある調味料で何とかしながら、自分なりに世界の料理を楽しむということも、1つのやり方で、それでおかしいことはまったくないのじゃないかと思います。



パエリアの材料ですが、まずは米。これはどのくらいでもいいんですが、フライパンで作るのなら、2カップ程度がやりやすいです。ただこれだと、1人で食べるにはちょっと多すぎなので、昨日は晩と朝との2食分で、1.5カップでやりました。



上にのせる具ですが、これは檀一雄によれば、「何でもいい」のだそうです。スペインの各地で、さまざまな種類のパエリアがあり、具がたくさん入っているものから、少数のものまで、色々あるそうですから、レシピに書いてある材料にあまりとらわれず、自分で好きに取捨選択したらいいと思います。ただ絶対あったらいいと思うのは、まず「鶏肉」。これは100グラムでも200グラムでも、自分がいいだけ入れたらいいんです。それからアサリ。この2つは、「だし」という意味でも、パエリアでは重要かと思います。



他にも、赤や黄色のパプリカは、入れると彩りもきれいになりますが、昨日は省略。そのかわりふつうのピーマンを1ついれました。あとはしめじ。それからトマト。トマトは、入れるやり方も、入れないやり方もあります。オリーブオイルとニンニク、タマネギ、それからパセリは、もちろん欠かすことができません。



フライパンを中火で温め、オリーブオイルを大さじ2くらいいれて、みじん切りにしたタマネギ半~1個と、やはりみじん切りにしたニンニク1~2かけを炒めます。タマネギがしんなりしてきたら、つづいて具を、中火のまま炒めていきます。まずは1口大に切った鶏肉。それから乱切りのピーマン、しめじ。次に殻のついたままのエビ。それから8等分程度に串切りにしたトマト。最後に砂出ししたアサリ・・・という具合に、火が通りにくいものから順にいれていきます。



エビは、「背わたを取る」といいますが、これはあまりにも死にそうにイライラしますから、気が短い人はあきらめたほうが無難です。べつに背わたが入っていても死にません。それからトマトの皮も、湯剥きしたほうがていねいですが、そのままいれてしまっても、とくべつ問題ありません。



材料をすべて炒め終わったら、給湯器の最高温度のお湯を1カップいれ、そのまま煮立たせて、塩小さじ1くらいにコショウをふり、アサリの口が開くまで、4~5分煮ます。



アサリの口が開いたら、ザルで漉して、具とスープを分けます。このスープを、ごはんを炊くのに使います。スープは、お米の1.1~1.2倍、米が1.5カップなら、スープは2カップ弱になるように、お湯を足しておきます。



フライパンを洗い、あらためてオリーブオイル大さじ2くらいをいれ、弱火にかけます。ここにコメをいれて、炒めます。米が油を吸い、ツヤツヤになるまで、2~3分炒めます。



ここにさっきのスープを注ぎ、そのまま弱火で、フタをして炊きます。この炊き加減が、1つのポイントとなるわけですが、時間にして10~15分。別にフタを開けてもかまいませんから、中をのぞきこみ、スープが沸騰するのが見えなくなったら、炊き上がりだと思ってかまいません。



そのまま弱火をつけたまま、ザルにあげてあった具を、ご飯の上にならべます。アサリは、全部殻をつけたままだとちょっとうるさいので、半分ほど殻を外しておいてもいいかもしれません。具を並べたら、フタを閉め、火を止めて、それから10分ほど蒸らして出来あがりです。



パエリア。パセリをふります。レモンを添えて、それを自分でかけながら食べるのがスペイン風、という話もありますね。



酒はもちろん、白ワインならおいしいですが、べつに焼酎お湯割りでも問題ありません。