2012-03-30

韓国の代表的な牛肉料理。
「プルコギ」




ほかの国の料理を作ってみることは、「料理」というものを改めて知ることができるようなところがあり、またおもしろいんですね。

世界にはさまざまな人たちが、その土地でとれる材料を使いながら、自分たちなりのやり方で料理をしてそれを食べています。

海外を旅行したときの大きな楽しみは、その国の料理を実際に食べてみることにあるでしょう。

料理は、人間の生活の中核の一つだから、料理を知ることは、その国の人の暮らし方を知ることに、大いに役立つわけなんですよね。



しかしそこをさらに踏み込んで、料理を食べるだけでなく、自分で作ってみると、その国の生活のあり方について、さらに深く、感じることができるようになる。

それと同時に、「料理」そのものに対する理解も、また深まることになるんだと思うんです。



韓国は、これは「日本人にとって」ということなのだと思うのですが、とても不思議な感じのする国で、一見、日本とそっくりに見えながら、よく見てみると、じつはまったく違っていたりする。

人の顔立ちや、着ている服などは、日本人とそれほど変わらないんですよね。

風景も、都会にしても、田舎にしても、「日本とそっくり」と感じられるところも多い。

しかしそこに感じるわずかな違和感を、よくよく掘り下げていくと、日本との大きな違いを発見することになるわけですけれど、その代表が、料理だったりする。



韓国の料理は、よく知られている通り、日本とはまったく違って、とにかく辛い。おまけにニンニクが大量に入っている。

現在では日本でも、かなり韓国の料理が食べられるようにはなりましたけれど、日本の韓国料理屋で出されるものは、それでもずいぶん、日本人向けにアレンジされている。

韓国の料理をそのまま日本で出したら、その辛さとニンニクの量とで、多くの日本人は食べられないんじゃないでしょうか。

じっさい僕も、大学生のころ、初めて韓国へ行ったときには、食べ物でお腹をやられてしまい、滞在の後半は、ピザとかハンバーガーとか、日本でも食べられるようなものばかり食べていました。



飛行機で2時間もあれば到着する、日本からいちばん近い国である韓国の料理が、なぜこれほど違うのか、不思議になるわけなんですが、「料理法」という観点から見ると、なんとなくわかるような気がしてくるところがあるんです。

「肉や魚の生臭みにどう対処するか」というおなじ問題にたいする、2つの答えなんだと思うんですよね。



肉や魚は、焼いてしまえば、塩だけふって食べてもおいしいわけですが、これを「煮る」ことになると、問題が生まれる。

そのままだと生臭いんですよね。

これを日本がどう解決したかといえば、その代表例が、「かつお節」だと思うんですが、魚を加工することで、生臭みを「消す」ようにした。

また魚を生のままで煮る場合にも、だしを味わうのは鯛など、もともと生臭みの少ないものだけで、あとの魚は煮付けたり焼いたりして、だしとしての利用はしないようにした。

肉についても、だしとして利用するのは、生臭みの少ない鶏だけで、生臭みの強い豚や牛は、使わない。

生臭いものは、「そもそも使わない」という形で、日本は肉や魚の生臭みに対処したのだと思うんですよね。



それに対して、韓国では生臭みを、

「強烈な味の調味料で中和する」

ことにしたのでしょう。

それが、唐辛子とニンニク、それにゴマだった。

ですから韓国では、豚肉や牛肉も、だしとして利用することができる。

醤油や酒だけでは消えてくれない豚肉や牛肉の生臭みも、これらの調味料を入れれば、うまく中和することができるんですね。



「生臭み」という問題に対して、対処の仕方は、生臭いものの存在をなくすか、生臭いものの存在は許して、それを中和する別のものを加えるか、2つに1つでしょう。

日本と韓国は、その2つのそれぞれを選んでいるというわけです。

表面的には、日本とは全くちがって見える、韓国の料理ですが、こうしてその背後にある、「共通した問題」が見えてくると、なんとなく身近に感じられてくるような気がする。

そうやって考えてみると、韓国のあの激しい国民性も、また同時に、日本の排他的な国民性も、なんとなく納得できるものがあるように思えてくるんですよね。



まあこのことが、どれだけ当たっているかは別として、すくなくとも、ほかの国の料理を作ってみると、日本の料理だけ作っていたときには考えもしないようなことを、あれこれ考えることになるのはたしかです。

そうすると、「料理」や「世界」について、改めて見えてくるものがあるような気がしてくるところが、たのしいところだと思うんですね。






「プルコギ」は、韓国の代表的な料理の1つだといえるでしょう。

「韓国風焼肉」と言われたりもしますけれど、焼肉とはだいぶ趣きがちがい、「すき焼き」に近いです。

味付けも、韓国料理には珍しく、唐辛子を入れない。

砂糖と醤油の甘辛い味に、ニンニクの風味がたっぷりします。



牛肉は、いいのを使えば、もちろんおいしいには違いないでしょうが、この料理はたっぷりの野菜が入りますから、高い肉である必要はありません。

スーパーの特売で、100グラム100円くらいで売っている、オーストラリア産ので十分です。



作り方も、たいへんシンプル。

フライパンや炒め鍋などに、材料をすべて入れていきます。

まず牛肉。コマ肉なら切らずにそのままでかまいません。好きなだけ入れます。

昨日は200グラムくらい使いました。

それから玉ねぎ。中ぐらいの大きさなら半分くらいを、繊維に垂直に、細く切って入れます。

ニンジン。これも細く切ったのを2分の1本くらい。

しいたけ。細く切ったのを2個分。

プルコギに入れる材料は、以上のものが、最低ラインとなるのじゃないかと思います。

あとは昨日は、もやし半袋とニラ半把を入れました。



調味料ですが、まずニンニク。

これは好みで、1~3かけをすりおろして入れます。

あとは、砂糖と酒、みりん、醤油。

これは別の器にあわせて、味見してから入れるようにしたらいいと思います。

砂糖大さじ1に、酒とみりん、醤油を8分の1カップでも入れて、甘ければ醤油、辛ければ砂糖やみりんを足す。



すべてをフライパンに入れ終わったら、これを手で、よくもみ込みます。

十分もみ込んで、肉や野菜に調味料がしみ込んだら、ごま油を大さじ1~2くらいたらして、さらに手で混ぜる。

こんな感じの状態になります。

このフライパンを、そのまま中火にかけます。



火にかけると、野菜やら調味料やらの水分が出てきて、「焼く」というよりは「蒸し焼き」のようになりますが、それでいいです。

箸で上下を返しながら火を通し、肉に火が通り、全体がしんなりとしたら、すりごまをふりかけて出来あがりです。



甘みのある、やさしい味。

これはニンニクが嫌いでなければ、2~3かけ、たっぷり入れたほうが、韓国らしくなりますね。

プルコギは、汁がまたうまいので、もしご飯があれば、かけて食べると最高です。



あとは、韓国風わかめスープ。

牛コマ肉のパックがけっこう大量で、プルコギだけでは使い切れないので、スープにも使いました。

韓国では、牛肉を使ったスープは、かなりポピュラーなんですね。



鍋に水を張り、牛コマ肉ひとつかみにニンニク1かけを入れます。

これを強火にかけ、煮立ったら弱火にし、ふつふつと沸騰するくらいにして、アクを取りながら10分くらい煮ます。

昨日は肉をとり出さなかったんですが、もうだしがらで、味が全然ありませんから、とり出してしまったほうがいいですね。

酒を半カップくらい入れ、乾燥わかめをそのまま入れて、さらに煮ます。

これは、わかめがクタクタになるまで、かなり煮込んでもおいしいです。

最後に塩と醤油で味付けしたら出来あがり。



器に盛り、すりごまをふる。

牛だしのやさしい味は、大変おいしいです。



あとはキムチで、酒は焼酎のお湯割り。

おかずは、何か一品でも韓国風にしたら、その他全部も韓国風にしないとダメですね。

韓国風の強烈な味の前には、和風の微妙な味は、消し飛んでしまいます。



スープには、うどんを入れても、もちろんおいしいです。