2011-10-04

京都の魚屋が教える「しめ鯖」の作り方


秋の魚といえば、まずは先陣を切って、夏の後半から秋刀魚がうまくなってきて、まさに今、真っ盛りとなっているわけだけれども、秋が深まるにつれて、今度は鯖がうまくなる。

鯖の何がたまらないかといえば、手をかけると味が引き立ち、手のかけ方によりまったく違う顔を見せるところだ。

鯖はもちろん生でも食えるが、生の鯖はそれほどどうということもない、取り立てて特徴のない味をしている。でもこれを一旦酢でしめれば大変身して、他の追従を許さない、いぶし銀のような光を放つことになるわけだ。

塩をして焼けば、またこれがまったく違ったうまさになるし、船場汁のように汁の実にしても、独特の出汁がでる。過度に自分を主張するのでなく、料理に合わせて自分の姿を変えていく、例えてみれば、ロバート・デ・ニーロのような奴だ。

だから寿司屋でも、しめ鯖を食べれば、その大将の技術が分かる。その日の鯖の状態を見て、しめすぎて酸っぱくし過ぎてしまうのでなく、またしめ足りず生のような状態でもなく、鯖のよさを活かしながら、丁度よいしめ加減を決めるのは、寿司屋の腕の見せ所ともいえるだろう。



鯖はまだ少し時期が早いけれど、いつも行く魚屋に、青光したうまそうな一本物の鯖がごろごろ置かれていて、半身でも売ってくれるというから、それをしめ鯖用におろしてもらうことにした。やはり旬の鯖を味わうためには、まずはしめ鯖から始めなければいけない。

魚屋にはいかにも職人といったタイプの、溌剌とした感じのよい若大将がいるのだが、この若大将、僕がしめ鯖にすると言ったら、奥で食事していたのをわざわざ出てきて、親父さんが途中まで処理した鯖を奪い取って、自分で塩を振りなおし、やり方について、事細かに教えてくれた。

やはり京都は、鯖には思い入れのある土地柄だし、魚屋としても、しめ鯖の作り方については、こだわりがあるのだろう。


魚屋の若大将は、鯖の表裏にかなり強めに塩をして、これを洗ってから酢に漬けろとのことだった。塩をしておく時間は、よく「2時間」などと聞くが、これは冷蔵庫で一晩置いてしまってもいいのだそうだ。

逆に酢につける時間は、「3時間」と、はっきりとした指定があった。ネットを見ると、30分から一晩置いてしまうのまで、大きな幅があるのだが、若大将の「3時間」は強い確信に満ちていたから、もちろんそれに従うことにした。


漬け汁は、酢とほんのちょっぴりの砂糖。昆布と一緒に漬け込むようにする。


きっかり3時間たったら、キッチンペーパーで酢を拭い、小骨を一本一本指で抜いて、皮を剥ぐ。皮は指で簡単にむける。

この状態で、ラップに包んで冷蔵庫に入れ、翌日食べてもまたうまいとのこと。だから昨日は、半分だけ切ってみた。


いやこれはすごい。見よ、この絶妙なしめ加減。外側は白くなっているが、中はほんのり赤く、ステーキで言えばミディアムの焼き加減といったところだろう。味も言うまでもなく絶品。下手な寿司屋よりよほどうまかった。

鯖はまだまだこれからうまくなるから、ほんと楽しみだ。



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八百屋に「中抜き菜」というのがあったから買ってみた。大根なのだが、作柄調整のために、大きくなる前に間引かれたものらしい。漬物にするものだが、炊いてもいいというから、油揚げと一緒に炊いてみた。


素朴な味で、ちょっと無骨なところが、またしみじみとしていい。




三条会商店街の豆腐屋の豆腐。京都の木綿豆腐は、「ソフトもめん」と呼ばれるちょっと柔らかめのタイプが多い。今まで初めから薬味と醤油をかけてしまっていたのだが、それはやめて、そのまま食べたり塩だけ付けて食べてみたりするのが楽しい。




そんな肴で、昨日は冷や酒を1合半。