2011-07-29

異常に簡単に作れ、しかもうまい、肉じゃがの作り方


「初心者に料理の手ほどきをする」
という観点で考えると、ほんとうはこの肉じゃがはまだ早くて、焼きそばだのソーミンチャンプルーだのをもう少し徹底的にやりたいところなのだけれど、こちらが毎日の食事を食べる順番というものもあるから仕方ないのだ。
毎週木曜日はグルメシティが「木曜モックン」の特売日で、そこで米国産の牛コマ肉が安く出るから、「それじゃそれで肉じゃがを作ろう」という話になる。

しかし肉じゃがもひとり暮らしにはうってつけの料理で、炭水化物から肉、野菜までが入ったものを一回の手順で作ることができる。
また酒にもご飯にもよく合い、しかも作るのは簡単。
さらに和食の「煮物」の基本でもあるから、ひとりメシの初心者がこれを作ってみるというのは悪くないのです。


◎ 献立としての肉じゃがの位置付け

献立として肉じゃがを考えると、ジャガイモという炭水化物がたっぷり入り、肉も野菜も揃っているのだから、おかずとしてはこれだけでいい。
これに酒、というのが、晩めしとしてはいちばん手軽な取り合わせだ。

「酒は飲まない」という場合、栄養だけ考えたら肉じゃがだけでもいいのだけれど、やはりそれでは食事として成り立たないところがあるから、ご飯に漬物でも添えれば十分。
煮物は料理自体に汁気が含まれるから、味噌汁は付けなくてもまったく寂しい感じはしない。


◎ 和食の「煮物」の考え方

「煮る」とか「煮込む」とかいうと、どうしても「カレー」とか「シチュー」とか、思い出してしまうところがありますよね。
でもあれはあくまで西洋流の煮込み料理。
「肉を何時間もかけてコトコト煮る」などということを日本ではしないのだ。

日本には煮物は2通りある。

1つは「おでん」みたいに、汁を沸騰させずにゆっくり煮るやり方。
もう1つはこの肉じゃがみたいに、強火で煮て、汁気を飛ばして煮詰めるやり方。

これはどちらも、料理をしたことがない人はあまり馴染みがないと思うのだけれど、西洋にはない、日本独特(なのか中国由来なのか)のやり方だから、
「日本の文化を知る」
という意味でも、これは知っておいて悪くはないのだ。



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◎ 肉じゃがの作り方

材料は、ジャガイモ。ニンジン。玉ねぎ。それに牛コマ肉。アメリカ産の牛コマ肉は、スーパーへ行くと驚くほど安く売っている。
これに大根やしらたきなんかを入れてもうまい。

野菜は適当な大きさにザクザクと切る。
肉じゃがの場合、野菜はあまり小さく切ってしまわず、ゴロゴロとさせたほうが、食べ応えとして楽しい。
切り方は料理の本を見ればいろいろ載っているのだけれど、なあに、そんなの気にせず、好きなように切ればいいのだ。

初心者が料理をしようとする時、そのエネルギーにブレーキをかけてしまう一番大きなこととして、
「もしかしたらもっと本式の、ちゃんとしたやり方があるのじゃないか」
と思ってしまう、ということがある。
自分のやっていることなど、素人じみた、つまらないことなのじゃないか。

でもそんなことを考えてしまうことほど、つまらないものはない。
料理など、いくらでも自分が好きなようにやったらいいのだ。
それでその後に、「もっといい」と思えるやり方を見つけたら、それに変更したらいい。
料理は「まずやってみる」ことが大事で、素人だとか玄人だとかいうのは、料理にはまったく関係ないのだ。

ジャガイモは、切ったらすぐに、水に浸しておく。
こうするとジャガイモから余分なでんぷん質が抜けて、煮崩れしにくくなる。

これは好みなのだが、まずはジャガイモとニンジンだけを煮る。
玉ねぎは煮上げる直前に入れて、シャキシャキ感を残したほうがうまい。
これは料理研究家 小林カツ代の方式。
でも玉ねぎはやわらかいほうが好きだという人は、最初から煮たっていい。

肉じゃがを作るには、フライパンを使う。
日本式の汁気を飛ばして煮詰める煮物は、フライパンでやると、平たいのですごくやりやすい。
魚を煮付けるのも、フライパンが一番。

ジャガイモとニンジンをフライパンに入れ、そこに
「カップ1杯」
の水を入れる。

ここで初心者の人は、「カップ1杯」の水というのが、ぜったい不安になると思うのだ。
野菜に水が、まったくかぶらない。
でもこれでちゃんと火が通るから、心配いりません。

日本式の煮物というのは、考え方として西洋の煮込み料理とまったく違う。
西洋のやり方でいうと、煮るというより「蒸し焼き」に近いのだな。

それでフライパンにフタをして、
「強火」
にかける。

もしフライパンのフタを持っていなければ、今日買いに行こう。
フライパンのフタは非常に便利で、絶対あったほうがいいです。

煮立ってきたら、そのまま3分ほど煮る。

そしたらここで、牛肉を入れる。
それから、スプーンに山盛り4杯か5杯くらいの砂糖。
この「スプーン」は、僕が使うのはカレーを食べるときとかの普通のスプーン。
計量スプーンとか、使わないに越したことはないです。
調味料で気を付けないといけないのは、「塩気の加減」だけで、これは辛すぎると料理が台無しになってしまうけれども、あとは適当でいいんです。

さらに醤油。
これはちょぼちょぼと入れてみて、味を見て、塩気がちょっと足りないかな、というくらいにしておく。

そしたらフタを閉めてまた煮る。

アクがけっこう出てくるのだけれど、これはまったく取らなくていいのです。
魚を煮る場合、アクは臭みのもとになるから丁寧に取った方がいいのだけれど、肉の場合は
「アクも味のうち…」
肉のアクというのは、要は「肉汁」で、うまみのもとなのだ。

見た目として気になる場合はちょっと取ってもいいのだけれど、あまり取り過ぎるとうまみがなくなってしまう。
とくにこの肉じゃがの場合は、アクが、味の大事なポイントとなるので、絶対に取らないほうがいい。

それでまた3分くらい煮る。

ここで味を見て、ちょうどいい加減になるまで醤油をたす。
そして玉ねぎを入れる。

それからまたフタをして、2分くらい

そしてですねえ、沸騰が始まってから、きっかり10分たったらフタを取って、煮詰め作業に入るのです。

これは、ほんとにきっかり10分。
それより長いとジャガイモが煮崩れるし、短いと煮足りない。

フライパンの上下を返しながら、煮汁が「ほとんどない」というところまで煮詰めていく。
フライパンを揺すって上下を返せれば、そうしたらいいんだけど、汁も入っているし危ないので、無理せずフライ返しでやるのもいいかも。

汁が煮詰まったら、完成です。

これはポイントとしては、かならず
「七味唐辛子」
をふって食べる。
これは作家 池波正太郎のやり方。
七味があるのとないのとじゃ、味が10倍くらい違います。

青ねぎもふるといい。見た目がいいから。
肉じゃがに青ねぎをふるというのは、僕が広島にいる時に覚えたやり方。


この肉じゃがの作り方は、ケンタロウとか、ためしてガッテン、あと海軍式の肉じゃが、池波正太郎のすきやき、などなどのいくつかのレシピを参考にして、僕流にアレンジしたものです。
(あ、でも正確にいうと、ケンタロウやためしてガッテンがどうやって作っていたかは、ちゃんとは覚えていない)
野菜は炒めないし、アクも取らない、調味料も砂糖と醤油だけ、というとても簡単なやり方ですが、間違いなく非常にうまいです。
ぜひ試してみてください。