2010-08-04

中華そば 陽気

「中華そば 陽気」といえば、広島で老舗の、最も有名なラーメン屋なのだが、ここはそれとは関係ない、京都の店。西大路太子道を、西にちょっと入ったあたりにある。始めて13年だそうだ。

当然生ビール。

ギョウザセット750円の、ギョウザだけ先に出してもらう。ラーメン単品は600円。

ビールを飲み終わったらラーメン。

それにライスと漬物。

このラーメン、日本広しといえども、この味を出しているのはここだけだと言えるのじゃないかと思うくらい、かなりの珍品。

味は、かなりうまい。まず背脂の溶けたのが、スープの上に5ミリくらいの厚さの膜をつくっていて、それが猛烈なコクを出している。臭みはまったくない。いいのを使って、きちんと処理しているということだろう。

それでスープだが、醤油味なのだが、何か独特の、香ばしい、おせんべいのような感じの味がする。隠し味が入っているのだな。同じ味が、ギョウザにもした。こういう味がラーメンに入っているというのは、経験したことがないような、しかしよく知っているもののような、不思議な感じ。帰り際においちゃんに、この隠し味はゴマですか、と聞いてみたら、「いや、愛が入っていますから」と、誤魔化されてしまったのだが、帰り道チャリンコをこぎながら、ゲップが出てわかった。インスタントラーメンの味なのだ。どうやってこの味を出しているか、よくわからないが、インスタントラーメンの粉末スープをそのまま入れているのじゃないかと思うくらい、まさにインスタントラーメンの味。

インスタントラーメンというのは、ラーメンを作る側にとっては、避けては通れない、大きな課題になっているにちがいない。多くの日本人はたぶん、ほんとのラーメンより、インスタントラーメンを食べる機会のほうが多いだろう。そういう人たちにとっては、インスタントラーメンの味こそが、慣れ親しんだラーメンの味だろう。慣れ親しんだ味をおいしいと思うのは、人間の自然な傾向であって、それを否定することは、誰にもできない。それではそういう味覚を持った人にたいして、おいしいと思ってもらえるラーメンをどうやって作れるのかということが、ラーメンを作る側の人たちにとって、第一に考えなければならない問題となっているにちがいない。

そのとき、それを直接的にインスタントラーメンの味にしてしまうということは、ラーメン屋の存在意義をなくしかねないことですらあり、ふつうは思い付かないことなのじゃないかと思うが、この店の店主はそれをやるわけだ。それでまずいのかと言えば、まったくそんなことはなく、実際うまい。まさにこちらのラーメンのツボを、イチイチ突いてくる。しかしそのツボは、幼少の頃よりのインスタントラーメン経験で培われてきたものなのだから、当然のことなわけだ。

このことをどう評価したらよいのか、僕も迷っている。ラーメン屋の風上にもおけないと考えるべきなのか、それともラーメンというものは、あくまでB級の、料理ともいえないようなものなのだから、とにかく何であれ、おいしければいいと考えるべきなのか。そういう大きな問題を投げかけるともいえるこの店、ぜひ一度経験してみるのは悪くない。


中華そば陽気 ラーメン / 円町駅西大路御池駅山ノ内駅
★★★☆☆ 3.0