小林秀雄の講演CD、僕は本を読んでいるから、こんなものは聞かなくていいと、買っていなかったのだが、やはり小林秀雄の生の声が聞いてみたいと、ミーハーな僕としては、つい買ってしまった。2時間ほどの講演が収められた、CD2枚組が、4,200円。講演をした本人は、こんなものが売り物にされるとは思っていなかったわけだから、ちょっと高いのじゃないかと思うが、どうなのか。
昭和49年に、鹿児島県の高校で、高校生や大学生など、若者相手に話したもので、講演という限られた人を相手に話す場だからか、若者相手だからなのか、本で読むのと比べて、現代の知識人や科学に対する批判が、だいぶ歯切れが良い。その分わかりやすくなっていて、やはり本に書くときは、自分の書いたことに対する反論なども意識しながら書くだろうから、かなりオブラートに包まれていたんだな。
ユリ・ゲラーの超能力が、ちょうど流行った頃らしく、テレビの前で念じたら、自分の時計も動いたり、スプーンも曲がったのだそうで、そういう念力やなんかみたいなものは、自分も昔からよく知っているのだが、それに対する知識人の態度が、そんなものを頭から信じないか、ただ無責任に囃したてるか、そのどちらかで、現実の実際の経験に対する態度として、非常に良くない、というような話もしていて、あ、そこまで踏み込んで言うんだなと、ちょっと新鮮だった。普通なら念力を認めることなど、おかしなおやじだと思われるから、あまり言わないようにするようなことじゃないかと思うが、違うのだな、小林秀雄は。
CDに入っている解説に、「志ん生の話し方に似ている」と書いてあって、僕は志ん生の落語というものは聞いたことがないから、似ているのかどうかわからないが、たしかに鼻に抜けた、ちょっと甲高いような声で、ゆっくりと間を置きながら話していて、聴きやすい。学生の質問も入っていて、そういうものに小林秀雄が答える、その答え方も、面白い。
信ずることと考えること―講義・質疑応答 (新潮CD 講演 小林秀雄講演 第 2巻)
★★★★☆