2009-06-23

銀山町 「PASTA ENZO」

先日、彫刻家・和田拓治郎さんとお会いした時、二軒目に連れていってもらった店。今週6月25日より7月7日まで、この店で「夜景レストラン」の第二部が開催される。

いやすごい店で、スナックや風俗店が軒を連ねる、薬研堀の飲み屋街のど真ん中、そこにある飲み屋ビルの、地下一階にあるのだが、看板も何も出ていなくて、これは知らない人は入れないな。名刺というかカードというか、店の住所や連絡先などが書いてあるべき紙をもらったのだが、

これが表に「PASTA ENZO」とだけ書いてあって、あとは表にも裏にも、何も書いていない。ところがよくよく見ると、

見えるかな、インクではなく刻印で、PASTA ENZOのすぐ下に、「10th ANNIVERSARY」という文字と、いちばん下に「pasta-enzo.com」というホームページのアドレスが掘り込まれている。徹底的に敷居を高くしてあるわけなのだが、このホームページ
http://pasta-enzo.com/
はかなり充実していて、アニメーションや、ブログなんかもやってたりして、この店にはあくまで、ある世界があって、その世界に共感した人に来てほしい、ということなんだな。元々はワゴン車で屋台として営業していたのだそうで、しかも客席が4席しかなかったとのこと、しかしそこで生まれたカップルが26組という、伝説も持つのだそうだ。

店主は矢沢永吉、奥田民生張り、痩せぎすでギョロっとした目の典型的な広島男児。まだ30代だと思うが、愛想を振りまくとか、そういうことは全くしない。このPASTA ENZOというコミュニティーの管理人、大将、なんだな、あくまで。かといって偉そうな嫌な感じとかではなく、人に対する気配りは細やかな人なのだと思う。そこに惹かれて、人が集まってくるのだろうな。

店内はパスタ屋というより、まさにバー。ちょっと薄暗くて、落ち着いた雰囲気。

拓治郎さんの彫刻が、さりげなく飾ってあったりもした。しかも後ろ向き。

料理に関しては、腕はたしかだと思う。

イカ墨スパゲティー。僕はパスタを食べ歩いたりはしてしないので、他店と比べることはあまりできないのだが、味の色んな要素について、どれ一つとして突出したところがない、上品な味。広島らしいな、陽気やすずめの味と同じだ。何かを突出させないって、逆に言うと一見特徴がないようにも見えるから、商売として出そうと思うと、けっこうな度胸がいるんじゃないかと思うんだよな。でも本当は、下手な特徴なんかより、全体が調和している方が、高級なんだよな。

つまみとして出してもらったブロッコリー。何かで和えているのだが、これも食べてみても、とてもうまいのだが、すぐには何だかわからない。ツナと黒オリーブなのだそうだ。ツナ、そしてオリーブの味がバラバラにならず、一体化して一つの味を作り出している。たいしたものだな。

店主は元々ホテルで調理師をしていたそうだが、その時、満得の店主が先輩としていたのだそうだ。個性的な料理人が育つ、特別な土壌が、その時、その場所に、あったということなんだろうな、きっと。

PASTA ENZO (イタリアン / 銀山町、胡町、八丁堀)
★★★★ 4.0