2009-03-16

江波 「中華そば 陽気」

広島へ越してきて、まず初めに食べたラーメンが、口コミで上位だった「あ味」、そして次に食べたのが、広島を代表するラーメン店と言われる、この陽気 だった。
大変おいしく、この店はメニューが「中華そば 600円」のみ、ご飯物やギョウザなど何もないこともあり、思わずもう一杯、おかわりしてしまったのだが、今回8ヶ月ぶりに、その味を確認したいと思ってやって来たのだ。

入り口を入ると、ふくよかな、えびす様みたいな顔をしたおばちゃんに、「一つですか」と訊かれる。
メニューが一種類だから、個数で注文するようになっているのだ。

中華そば、600円。

この中華そば、広島のほかの中華そばと比べて、何が変わっているということはないのである。
スープも麺も、チャーシューも、上にのっている細もやしと青ねぎも、まったく同じ。
なのだが、うまい。
スープを一口すすったら最後、スープの最後の一滴を飲み干すまで、一気に行ってしまう。

ゴツゴツ出っ張ったところがないのだ。
豚骨だしにありがちな、臭みやえぐみというようなものが、まったくない。
スープは濃すぎることもなく、薄すぎることもない。
チャーシューも、硬すぎもせず、やわらかすぎもしない。
すべてが抵抗なく口に入り、身体に収まっていくのである。

あのえびす顔の人の良さそうなおばちゃんに、どうしてこんなラーメンを作ることができるのか。
たぶんおばちゃんは、玉を磨くように、ラーメンを作っているんだろうと思う。
大事な玉を毎日撫で、磨いているうちに、長い時間かかって、角が取れ、まん丸になっていく。
そういうことなんじゃないかと思う。

特徴を出そう、などというのは、下世話な考えなのだ。
昔教えられた、その通りのやり方を、毎日毎日、繰り返す。
しかしその繰り返しが、自然に発見を生み、その発見は、教えの意味を、また一つ明確にする。
そういうことなんだろうなと思う。

陽気 (ようき)